冬の朝、リビングの温度計は13℃を指していた。「高気密・高断熱」がウリのはずの、建てて数年の家で、だ。
今日はお金の話から少し離れて、「家」の話をしたい。といっても家づくりは、このブログのテーマ——お金の使い方とまっすぐつながっている。3,760万円で建てた我が家の、その後の話だ。
先に結論——これから家を建てる人へ、3つだけ
体験談に入る前に、僕が今いちばん大事だと思っていることを、先に置いておく。
- ① 断熱・気密の「性能」を最優先に。毎月、一生、効く。
- ② ローンは「固定」で、無理のない額に。金利が上がる局面で、変動は怖い。
- ③ 太陽光・蓄電池は、性能を満たして余力があれば。
- ④ それでも余ったお金は、投資に回せ。
ローンは固定・無理しない——展示場で出会ったFPの話
我が家のローンはフラット35。当初10年0.68%、その後0.98%の、ほぼ固定だ。変動金利の安さに惹かれなかったわけじゃない。でも、固定にした。
決め手は、家を探していたころ、住宅展示場の無料FP相談で言われた一言だった。担当してくれたのは、お金の話で知られるFP・菱田政生さんだった。
正直に言うと、僕は人の「無料相談」を簡単には信じない。展示場のタダの相談なんて、たいていどこかに運営側の都合がある——そう身構えて席に着いた。
ところが菱田さんは、ほぼ開口一番にこう言った。「展示場で高い家を、無理して買っちゃダメ。工務店で建てなさい」「返済は、無理のない額に」。展示場の利益に真っ向から反する助言だ。だから、逆に信用できた。
金利については「いまは低金利だから、固定一択」。当時はピンと来なかったが、その後の金利上昇局面を、僕は固定のおかげで動じずに眺めていられている。菱田さんの話はいまYouTubeでも聞けるので、家を考えている人はぜひ一度。
……ちなみに、この「工務店で建てなさい」という助言を、僕は半分しか聞かなかった。建てたのは、大手ハウスメーカーだ。そして、まさにそこで、つまずくことになる。
太陽光より、断熱にお金をかけろ
家を建てるとき、必ず勧められるのが太陽光発電と蓄電池だ。「光熱費がタダになる」「売電で儲かる」。
でも、よく考えてほしい。太陽光+蓄電池で、ざっと200〜300万円。元が取れるのは、順調にいって十数年〜20年後だ。その間にパネルも蓄電池も劣化するし、売電価格は下がり続けている。20年後に本当に得しているか、正直、誰にも分からない。
それなら、その200〜300万円を断熱・気密の性能アップに回したほうがいい、というのが僕の考えだ。性能は、晴れでも雨でも、昼でも夜でも、20年後も、毎月確実に効き続ける。
そして、それでもお金が余るなら——投資に回す。太陽光の「20年後に取れるかもしれない元」より、インデックス投資のほうがよほどリターンが読める。不確実なものに賭けるより、確実に効く「性能」と、読める「投資」に分ける。これが我が家の方針だ。
もっとも、我が家が太陽光を載せなかった本当の理由は、こんな立派な理屈じゃない。妻が「洋風の可愛い瓦屋根にしたいから、太陽光は載せないで」と言ったからだ。僕は載せたかった。でも——結果的に、載せなくてよかったと思っている。
正しい判断は、必ずしも正しい理由から生まれるとは限らない。
【余談】長野は日照トップクラス。それでも、載せるな。
正直に書いておくと、長野県は日照時間が全国トップクラス(山梨などと毎年1位を争う)。だから本当は、太陽光の「元が取れやすい」地域ではある。それを承知のうえで、それでも僕の意見は変わらない。載せるな、だ。
どうしても載せたいなら、蓄電池は要らない。代わりに「おひさまエコキュート」——昼間、太陽光でつくった電気でお湯を沸かす給湯——にして、昼の電気を“お湯”という形で貯めるほうが、高い蓄電池を買うよりずっと合理的だと思う。
このあたりを数字でちゃんと考えたい人は、松尾設計室さんのYouTubeがいちばん分かりやすい。太陽光も断熱も、感情論ではなく計算で語ってくれる。
※太陽光・蓄電池の損得は、屋根の向き・電気の使い方・補助金・設置価格で大きく変わります。これは一個人の意見です。
——で、その「高断熱の家」が、激寒だった
ここからが本題だ。我が家が建てたのは、セキスイハイムの「グランツーユーV」。完成時(2017年)の性能報告書には、こう書いてある。気密性能C値0.95、断熱性能UA値0.48。どちらも省エネ基準を上回る、立派な「高気密・高断熱」の数字だ。すきま風の少ない、暖かい家——のはずだった。
ところが、住んでみると寒い。冬の朝、リビングの温度計は13℃。夏は夏で、昼になると2階が30℃まで上がる。「高気密・高断熱」の家とは、とても思えなかった。
カタログの数字は出ているのに、なぜ寒いのか。納得がいかなくて、僕は自分で調べ始めた。
長野の工務店「リボーン」に、家を診てもらった
たどり着いたのが、長野県の高性能住宅で知られる工務店「リボーン」さんだった。新築の依頼ではなく、今住んでいる家の「健康診断」——インスペクション(住宅診断)をお願いした。費用は気密測定込みで10万円。入居5年目のことだ。
なぜ「高気密・高断熱」のはずの家が寒いのか——犯人は「熱橋」だった
リボーンの調査は、床下と小屋裏に潜り込み、サーモグラフィー(熱を色で見るカメラ)で家じゅうを撮るものだった。結果は、僕の予想とは少し違った。
断熱材は、ちゃんと入っていた。気流止めも、概ねできていた。巾木の温度は19℃、床の土台は18℃。「断熱、効いてますよ」と塩原さんは言う。じゃあ、なぜ寒いのか。
犯人は、「熱橋(ねっきょう/ヒートブリッジ)」だった。柱や金物、構造材が断熱の層を貫いて、そこだけ熱がダダ漏れになる弱点のことだ。サーモで見ると、わが家はそれだらけだった——壁パネルの交点、スタッド(柱)、点検口、無断熱の玄関土間(10℃以下)、そして二重窓の、窓と窓のあいだ(なんと1.5℃)。

極めつけは、小屋裏だった。

屋根の骨組み(トラス)の直下から、暖めた熱がどんどん逃げていた。しかも防湿・気密の層が連続しておらず、放っておけば結露して木材が腐るリスクすらあるという。そして、塩原さんのこの一言が、いちばん刺さった。
これは、仕様書どおりに施工されています。施工ミスじゃない。むしろ「設計不良」とも言える状態です。
施工が雑だったわけじゃない。図面どおりに、きちんと建てて、それでこうなる。そこがいちばん怖いところだった。
数字も裏づけていた。完成時に0.95だった気密(C値)は、5年で1.5に悪化。漏気が見つかったのも、和室や2階天井の点検口、間仕切り壁のスイッチプレートまわり、下屋の天井内部——。カタログに載る平均値(C値・UA値)には出てこない弱点ばかりが、家を冷やしていた。
ここで、リボーンの代表・塩原真貴さん(一級建築士)がくれた言葉が忘れられない。直す工事の見積もりは60万円ほど。でも、こう言われた。
これくらいなら、いろいろ勉強してる君なら自分でできるよ。やってみな。
普通なら自社で受ければ60万円の仕事を、ぽんと譲ってくれたのだ。
おかげで、かかったのは材料費の30万円ほど。差額は勉強代としても安い。(※断熱のDIYは、やり方を間違えると壁の中で結露やカビを起こし、かえって家を傷める。僕はプロの診断と助言のもとでやった。安易な自己流はおすすめしない。)
メーカーの「ユニットごとに断熱してます」
やったことは、塩原さんの指摘に沿って、熱橋をひとつずつ潰していくことだ。小屋裏のトラス直下に断熱材を足し、熱橋になっていた点検口をふさぎ、床下では配管まわりの隙間を発泡ウレタンで埋める。地味な作業の積み重ねだった。




そして、いちばん驚いたのが、ある一か所だった。1階の壁ぎわ、巾木(はばき=壁の足元の細い板)の下が、ところによって15cmほども空いていた。そこから床下の冷気が、壁の中へスースー吸い込まれていたのだ。ここをグラスウールでみっちり詰めて塞いだ。足元の寒さが、これでぐっと和らいだ。

もうひとつ。報告書で「点検口がなくて中を確認できない」とされたのが、下屋(げや=1階の上の小さな屋根)の天井だった。気密試験では、ここからの漏気も見つかっていた。そこでセキスイハイムの本社と話し合い、下屋に点検口を新たに作ってもらって、そこから断熱材を詰めた。
ただ、メーカーの対応には、正直モヤモヤが残っている。サーモグラフィーの結果——熱橋や小屋裏から熱が逃げている事実——を伝えても、返ってきたのは「うちはユニットごとに断熱していますので」という説明だった。現に寒くて、現にサーモには熱の逃げ道がはっきり写っているのに、だ。何度聞いても、僕にはこの説明の意味が分からなかった。(これは、あくまで僕が受けた対応の話で、同じ商品の家がすべてこうだ、という話ではない。)
それと、公平のために言い添えておきたい。間取りそのものには、いまも大満足している。じつはセキスイハイムを選んだのは、幼なじみがそこで建築士をしていて、間取りを一緒に、親身に考えてくれたからだ。暮らしてみて「この動線、よく考えられてるな」と感じる場面は本当に多い。僕の不満は、断熱性能のこの一点だけ。それ以外は、いい家だと思っている。
結果——快適になった。でも、電気代は「増えた」
屋根裏・床下の断熱、熱橋つぶし、そして巾木下の気流止め。いちばん大きな工事——2階の断熱材の増し張りと気流止め——が終わったのは、2025年2月10日だった。そして、家は変わった。
まず、寒さの底が上がった。断熱前は、夜に暖房を消すと朝は13℃。断熱後は、同じように消しても16℃までしか下がらなくなった。「たった3℃」と思うかもしれないが、朝起きたときの体感はまるで違う。
夏も同じだ。いまは2階のエアコン1台を27℃設定で回すだけで、家じゅうが涼しい。
ここで、正直に白状しないといけないことがある。
電気代は、下がっていない。むしろ、増えた。断熱を足したのに、だ。同じ月で使用量(kWh)を並べると、こうなる。
| 同じ月の電気使用量 | 2024年 | 2025年 | 2026年 |
|---|---|---|---|
| 1月分(真冬) | 1,128 | 1,400 | 1,553 |
| 2月分(真冬) | 1,108 | 1,232 | 1,367 |
| 8月分(真夏) | 569 | 624 | — |
念のため言っておくと、断熱が効かなかったわけじゃない。その証拠は、さっき書いた室温だ——夜に暖房を消しても、朝の底が13℃から16℃に上がった。効果は、はっきりあった。ただ電気の使用量という意味では、下がらなかった。むしろ増えた。問題は——いや、問題ですらないのだが——そのあと、暮らし方が変わったことだ。
理由は、はっきりしている。
①「我慢」をやめた。昔は寒くて、夜は1階の暖房を消して耐えていた。でもいまは、延床39坪(約129㎡)の我が家で、1階(約70㎡)を23℃で24時間つけっぱなし(2階も寝るときは一晩つけたまま)。夜に消して震えていた家が、消さない家になった。
② 2025年12月に3人目が生まれ、暖房を22℃→23℃に上げた。
③ 2024年にドラム式の乾燥機を入れ、気にせず回している。
④ そもそもオール電化だ。給湯はエコキュートで、夜間の電気でお湯を沸かしている。家族が増えれば、その分お湯も——つまり電気も増える。我が家の電気が夜に多いのは、これが理由だ。
つまり——断熱で「我慢」を手放したら、電気はむしろ増えた。これが、正直なところだ。
でも、後悔はしていない。断熱は「光熱費を減らす魔法」ではなかった。「同じくらいの家計のまま、我慢を手放す」ための投資だった。朝、子どもが寒さで布団から出られない家から、出られる家へ。その快適さを、30万円で買ったと思っている。
だから、お金の話に戻すとこうなる。断熱は『快適』を、投資は『お金』を増やす。役割が違う。太陽光のように「20年後に元が取れるか」と気を揉むものに賭けるより、毎日確実に効く快適さ(断熱)と、リターンの読めるお金(投資)に、分けて置けばいい。
まとめ——家にかけるお金の、優先順位
我が家の遠回りから言えることは、ひとつだ。家にお金をかけるなら、順番がある。
- ① 断熱・気密の「性能」——毎月、一生、効く。
- ② 無理のない固定ローン。
- ③ 太陽光・蓄電池は、性能を満たして余力があれば。
- ④ 余ったお金は投資へ。
派手な設備より、見えない性能。そして、その見えない性能を、カタログの数字だけで信じないこと。我が家のように、数字は出ているのに寒い家もある。気になるなら、第三者によるインスペクションは、10万円を払う価値が十分あった。
3,760万円で建てた家は、こうして30万円の追加で、ようやく「高断熱の家」になった。最初からそうだったら、と思わないでもない。でも、自分で壁の中をのぞいて、手を動かして直した経験は、お金には代えがたい勉強になった。
ちなみに、ここで浮いたお金や、太陽光に消えなかったお金は、僕の場合そのまま運用に回っている。家の性能も投資も、根っこの考え方は同じだ——「不確実なものに賭けず、確実に効くものにお金を置く」。
最後に、聞かせてください。あなたの家は、冬の朝、何℃ですか?「うちも寒い」「実はうちも展示場で…」そんな話があれば、コメントで教えてもらえたら嬉しいです。
※本記事は一個人の体験談です。住宅性能やローンの考え方は、各家庭の条件・予算・地域の気候で変わります。断熱のDIYは結露・構造劣化のリスクがあり、必ず専門家の診断・助言のもとで行ってください。筆者は建築・金融・税の専門家ではありません。


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