僕が子どものころ、家族旅行の記憶は1回しかありません。
母と、バスに乗って行ったディズニーランド。母子家庭だった我が家にとって、あれは相当な出費だったんだと思います。旅行らしい旅行は、後にも先にもその1回でした。
その母が、いま1.5億円を持っています。それでも軽自動車に乗っていて、旅行にも行きません。
この2つを、僕はずっと別々の話だと思っていました。「貧しかった子ども時代」と「増えすぎた母の資産」。でも最近、これは同じひとつの話なんじゃないかと思うようになりました。
母は「増やす」ことに人生を使った人です。そのおかげで、いまの我が家の土台があります。そこは心から感謝しています。ただ、母は増やしたお金を使えない。
僕は母から、節約と、お金を守ることを教わりました。そこは同じでいい。違うのは出口です。増えた分は、3人の子どもの経験に使う。
この記事は、30代の僕がいま実際にやっていることを、順番に全部書いたものです。保険を3つに減らして、固定費を削って、インデックスで増やして、配当という蛇口を作って、その分で子どもを旅行に連れて行く。それだけの話です。
父が死んだとき、保険が家族を助けた
僕が小学5年生のとき、父が亡くなりました。
そのとき下りた死亡保険金は約3,000万円。母はそれを守りながら働き、20年以上かけて約4,000万円まで育てました。このブログの第1話で書いた「母から預かった4,000万円」の出発点は、あの保険金です。
だから僕は、「保険なんて全部いらない」という話には乗りません。保険に実際に助けられた家族の、子どもだからです。
でも同時に、僕は医療保険にもがん保険にも入っていません。学資保険は4年で損切りして解約しました。矛盾して見えるかもしれませんが、僕の中ではたった1つの原則で全部つながっています。
起きたら経済的に再起不能になることだけに、保険をかける。
確率が高くても、貯金で払えることには、かけない。
この考え方は、リベ大(両学長)でも、経済評論家の山崎元さんの本でも、ほぼ同じことが書かれています。保険に関しては、この2つは対立しません。
僕が入っている保険は、3つだけ
整理すると、こうなります。
やめた保険
- 医療保険――入っていません。実際に指の手術で1泊入院しましたが、自己負担は約4万円で済みました
- がん保険――「2人に1人ががんになる」という営業トークで入りましたが、3年で解約しました
- 学資保険――毎月1万円を4年払って、10万円の損切りで解約。その顛末はこちら
- 貯蓄型・外貨建て保険――相続税対策で入ったドル建て終身保険は、2026年8月に解約予定です
残した保険は3つだけ
- 収入保障保険(僕が死んだとき、家族の生活費が消えるリスク)
- 自動車保険(他人を傷つけて、億単位の賠償を負うリスク)
- 火災保険(家が燃えて、住む場所とローンだけが残るリスク)
この3つに共通しているのは、確率は低いけれど、当たったら貯金では絶対に払えないということです。逆に言えば、貯金で払える金額のものには保険をかけない。医療費も、教育費も、そちら側でした。
年20,223円で、約2,800万円の保障を買っている
家を買ったとき、フラット35の団体信用生命保険(団信)に入りませんでした(自己資金0円で3,760万円の家を買った話)。機構団信は金利0.2%ほどの上乗せが全員一律で、健康な人ほど割に合わないと思ったからです。
代わりに入ったのが、FWD生命の収入保障保険でした。実物がこれです。

読み取れる数字はこうです。
- 年金月額 10万円
- 保険期間・保険料払込期間とも 60歳満了(2050年1月まで)
- 毎回払込保険料 20,223円(年払)
- 最低支払保証期間 5年
年間20,223円。月にならすと1,700円ほどです。タバコを吸わず、血圧やBMIなどが基準内であれば「非喫煙者優良体」という安い料率が使えます。
そして肝心の保障額です。2026年7月時点で、いま僕が死んだ場合はこうなります。
月10万円 × 満了(2050年1月)までの残り282か月 = 約2,800万円
必要な保障額は「公的保障との差額」で決まる
ではなぜ、月10万円にしたのか。ここは順番が大事だと思っています。
会社員が亡くなった場合、遺された家族にはまず公的な遺族年金が出ます。子どものいる世帯なら遺族基礎年金があり、厚生年金に入っていれば遺族厚生年金も加わります。ゼロから全部を民間保険で用意する必要はない、ということです。
だから民間の保険で買うべきなのは、この差額だけになります。
毎月の生活費 −(遺族年金 + 配偶者の収入 + 貯蓄の取り崩し)= 保険で埋める額
我が家はこれを計算して、月10万円と見積もりました。金額は家庭ごとにまるで違うので、ここだけは各自で試算してほしいところです。遺族年金の見込み額は「ねんきんネット」や年金事務所で確認できます。
この順番は、医療保険をやめたときの考え方とまったく同じです。まず公的制度で埋まる分を確認して、そこからはみ出した部分だけを民間で買う。逆にすると、いくらでも高い保険を買わされます。
保障が「減っていく」のは、むしろ合理的
収入保障保険がなぜここまで安いかというと、保障が時間とともに減っていくからです。図にするとこうなります。

一見すると損に見えます。でも考えてみると、これは理にかなっています。子どもが育つほど、家族に必要なお金は減っていくからです。子どもが3歳のときに僕が死ぬのと、22歳のときに死ぬのとでは、必要な金額がまるで違う。
定額の死亡保険で一生ぶんを買うと、必要のない期間まで保険料を払うことになります。減っていく形にして、いらない部分を削ったから年2万円で済んでいる。無解約返戻金型――つまり解約してもお金が返ってこない掛け捨てにしたのも、同じ理由です。
ちなみに、満了間際に死んだ場合でも最低5年ぶん(600万円)は支払われます。図の白い破線がそれです。
正直に書いておく、この保険の「穴」
いいことばかり書いても仕方ないので、承知のうえで開けている穴も書いておきます。
まず保障されるのは「死亡または所定の高度障害状態」です。逆に言えば、働けなくなっただけ(就業不能)では出ません。所定の特定障害状態や要介護状態も、僕は「生活支援特則」を付けていないので対象外です。
もうひとつ。この保険は2050年1月で満了しますが、我が家のフラット35は2053年まで残ります。つまりローン最後の約3年間は、僕が死んでも保険では埋まりません。そのころには残債もかなり小さくなっているはずなので、承知のうえで許容しました。
完璧な保険を買おうとすると、保険料はどこまでも上がります。どこに穴を開けるかを自分で決めるのが、保険選びなんだと思っています。
次に削ったのは、毎月出ていく固定費
保険の次は通信費です。我が家は家族で楽天モバイルにまとめています。
ここは楽天経済圏の記事に詳しく書きましたが、10年で通算213万ポイントもらっている一方、僕はいわゆる「ポイ活」を一度もしたことがありません。ポイントのために買い物をするのは本末転倒だからです。やったのは、もともと出ていく生活費の通り道を楽天に寄せただけ。
保険も通信費も同じで、一度削ると、あとは毎月自動的に効き続けます。節約でいちばん割がいいのは、この手の固定費です。
そして、浮いたお金は貯金ではなく投資に回します。断熱リフォームの記事でも書きましたが、お金を増やすのは投資の役目で、節約は「増やす原資を作る役目」だと割り切っています。
増やすところは、山崎元さんのやり方でいい
僕が投資を始めたのは2021年3月15日。学資保険の解約返戻金と貯金を合わせた約130万円を、S&P500に一括で入れました。そこからつみたてNISAで毎月3.3万円。
いま、投資信託(eMAXIS Slim米国株式)は約359万円になっています。トータルリターンはプラス194万円。これは投資信託だけの数字で、このあと書く国内高配当株や、過去に利益確定した分は含んでいません。
ただし正直に書いておくと、この+194万円には1ドル163円という強烈な円安のブーストが乗っています。円高に振れれば普通に減ります。
「増やす」フェーズについては、僕は山崎元さんの言うとおりでいいと思っています。『ほったらかし投資術』などで知られ、2024年に亡くなった経済評論家です。手数料の安いインデックスファンドを、余計なことを考えずに積む。娘たちのジュニアNISAで480万円が1,269万円になったのも、まったく同じやり方です。
これから始める人も、ここは迷わなくていいと思います。全世界株かS&P500のインデックスファンドを、新NISAのつみたて投資枠で。それ以上に難しいことをする必要はありません。
母を見て気づいた――「使う」ほうがずっと難しい
山崎さんは、出口についてこう書いていました。お金が必要になったら、必要な分だけ売ればいい。配当が欲しければ自分で売って作ればいい、と。
理屈としては100%正しいと思います。売るタイミングは自分で決められるし、税金の面でも有利になりやすい。
でも、僕の目の前には母がいます。
1.5億円を持っていて、軽自動車に乗っていて、旅行にも行かない人です。母は合理的でないのではなく、たぶん売れないんだと思います。減らすことが怖い。増やすために生きてきた人ほど、そうなる。
両学長も「インデックス投資は入口は簡単だけど、出口が難しい」と言っています。母は、その出口問題の生き証人です。
僕は母の子なので、たぶん同じ性格を持っています。40年後に「1.5億円あるけど怖くて使えない」となる自分が、けっこうリアルに想像できてしまう。
配当という「蛇口」を持つことにした理由
2025年1月9日、僕は1日で12銘柄以上の日本の高配当株を一括で買いました。いま国内高配当株は約116万円です。
そして、そこから実際に入ってきた配当がこれです。

63,809円。税金は0円です。NISAの成長投資枠で買っているので、そのまま全額が入ってきます。ならすと年5万円弱。
金額としては、正直たいしたことはありません。でも僕にとって大事なのは金額ではなく、この6万円を受け取るために、僕は一度も「売る」という判断をしていないということです。
取り崩しには「いま売っていいのか」という判断が毎回いります。株価が下がっていれば売りたくないし、上がっていればもっと待ちたくなる。でも配当なら、口座に振り込まれたお金を使うだけです。
この差は、理屈以上に大きいと思っています。若いうちから、罪悪感なく使えるお金の蛇口を持てる。我が家では、これがそのまま旅行の原資になっています。
だから僕の中では、こういう役割分担になっています。
インデックス(全世界株・S&P500)で、増やす。
高配当株で、使う勇気を補う。
山崎元さんの本と両学長の本は、出口の考え方が違います。僕はそれを「どちらが正しいか」ではなく、理論と、人間の弱さの折り合いとして受け取りました。増やす理屈は山崎さんが正しい。でも人間はそんなに強くないので、使うための仕掛けは別に用意しておく。
ちなみにこれ、ドル建て保険の記事で「解約したら日本の高配当株へ」と書いた話の前哨戦でもあります。本番の解約は2026年8月10日。実際にいくら戻ってきて、何を買ったのかは、そのときあらためて書きます。
順番だけは、間違えないでほしい
ただし、いきなり高配当株から入るのはおすすめしません。順番があります。
- まずインデックス(全世界株かS&P500)を、新NISAのつみたて投資枠で
- 3年くらい続けて、暴落を一度は経験する
- それから高配当株を足して二刀流にする
僕自身、2021年にインデックスを始めて、高配当株を買ったのは2025年です。約4年かかっています。この順番だったから続いた、という実感があります。
個別株はインデックスと違って、会社が傾けば配当も株価も普通に消えます。ここは楽観できません。
対策は身も蓋もなくて、銘柄を分散することと、その会社が過去にどんな成績を出してきたかを自分で見る目を持つことの2つだけです。
僕はこれをリベ大(リベラルアーツ大学)で学びました。両学長が「今月から高配当株を始めるなら」という形でポートフォリオの考え方を公開しているので、まずは少額――30万円くらいから試してみるのが現実的だと思います。
増えた分で、子どもを旅行に連れて行く
ここまでが手段の話です。本題はここからです。
削って、増やして、蛇口を作って、そのお金で何をするのか。僕の答えは子どもを旅行に連れて行くことです。
といっても、たいしたところには行っていません。長野県内の竜王SORA terrace(ソラテラス)、冬は鹿島槍スキー場。少し足を伸ばして、埼玉のグランフィルリゾーツでグランピングをしたくらいです。毎年同じような場所ですし、SNSに上げるような写真も撮っていません。



鹿島槍に行った日は、朝から「行きたくない」と言っていました。それが、着いて滑りはじめたら「まだ帰りたくない」に変わって、結局リフトが終わる時間まで滑っていた。写真はその日の夕方です。
でも、それでいいと思っています。雲海でも、雪の斜面でも、子どもを連れて行くという経験そのものに意味があると思うからです。
冒頭に書いたバス旅行のディズニーランドを、僕はいまでも覚えています。あれが1回きりだったからこそ覚えているのかもしれません。母はきっと、あの1回のために相当無理をしたはずです。
母は増やすことに徹して、子どもに経験を多く与えることはできませんでした。でも、その母の徹底した節約があったから、いまの僕がこうして子どもを旅行に連れて行けています。ものは考えようです。母のやり方を否定する気はまったくありません。
僕がやっているのは、母から受け継いだやり方の出口だけを変えることです。増やすところまでは母と同じ。増えた分を、次の世代の経験に変える。それだけです。
30代のあなたへ、5つのステップ
長くなったので、まとめます。僕がこの数年でやったことは、この5つに整理できます。
- 保険は3つだけ残す――収入保障・自動車・火災。医療、がん、学資、貯蓄型はやめる
- 固定費を削る――通信費が手をつけやすい。一度削れば毎月自動で効く
- インデックスで増やす――全世界株かS&P500を、新NISAのつみたて投資枠で淡々と
- 3年経ったら、配当という蛇口を足す――使う勇気を補うための仕掛け
- 増えた分は、経験に使う――貯めるのは手段であって、目的ではない
正直に書いておくと、僕自身の資産はまだ約475万円です。母の1.5億円とは比べものになりません。自慢できる金額ではないですし、これから暴落も経験するはずです。
それでも、順番は間違っていないと思っています。40年後に「1.5億円あるけど、怖くて使えない」とならないために、いまのうちから使う練習をしておく。それが、母を見ていて僕が学んだいちばん大きなことでした。
⚠️ 投資について
本記事は筆者個人の体験談と意見であり、投資助言ではありません。投資の判断はご自身の責任でお願いします。特に高配当株を含む個別株には、株価下落・減配・倒産といったリスクがあり、元本は保証されません。必ず余剰資金で、分散を前提にご検討ください。
⚠️ 保険について
筆者は保険の専門家ではありません。必要な保障は、家族構成・持ち家か賃貸か・勤務先の制度・貯蓄額などによって一人ひとり異なります。本記事のFWD収入保障はあくまで「我が家にとっての」最適解です。まずはご自身の保険証券と、勤務先の制度、公的保障(遺族年金)を確認してみてください。そのうえで判断がつかない場合は、保険を売る立場にない専門家に相談することをおすすめします。
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これまでの全記事は全話一覧からどうぞ。第1話から順に読むと、母の4,000万円が1.5億円になるまでの流れがつながります。


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